【洋画】「ミリオンダラー・ベイビー/Million Dollar Baby」(2004)【邦画】「春琴抄」(1976)

2015年07月29日

【経営】「How Google Works 私たちの働き方とマネジメント」エリック・シュミットさん、ジョナサン・ローゼンバーグさん

P341
一番嫌な質問をする

ビックがソーシャル事業に取り組みはじめたのは、こう自問した結果だった。「ウェブの主要な用途がソーシャル・プラットフォームだとしたら、それはグーグルにどのような意味を持つのだろうか」「ソーシャルウェブによって検索は時代遅れになるのか」と。とてもシンプルな方法が、企業内で変化への抗体が増殖するのを上回る速さで変革とイノベーションを進めるのに絶大な効果を発揮することもある。自分たちにとって、一番嫌な質問をするのだ。未来に向けて何をすべきか、会社についてあなたは気づいているのに、他の人々が気づいていないこと、あるいはわざと無視していることは何か(ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセンはこう言っている。「私は未来の問題をとらえられるように、自分が抱くべき疑問を常に考えている」)。情報が本当の意味でユビキタスになり、ネットの影響範囲や接続性が完全にグローバルになり、コンピューティングのリソースが無限になり、たくさんの「不可能」が「可能」になるだけでなく実現しはじめたら、あなたの事業にどんな影響が出るだろうか。テクノロジーの進歩は、猛烈な上昇軌道をたどっている。それをそのまま将来の合理的な地点まで延長し、こう自問してみよう。「これは私たちにとって、どういう意味を持つのか?」

(中略)

事業を営んでいる企業には必ず「聞かれて嫌な質問」があるが聞かれないままのケースも多い。良い答えがなく、誰もが不安になるからだ。しかし、だからこそこうした質問に意味があるのだ。みんなを安穏とさせないためである。ライバルが本気で潰しにかかってくる前に、仲間内からの問いかけで不安になったほうがいい。エリック(・シュミット)はそれをサン(・マイクロシステムズ)で学んだ。一番嫌な質問に良い答えが見つからなくても、少なくとも一つはメリットがある。簡単に答えの出ない一番嫌な質問は、大企業のリスク回避的な、変化に抵抗する傾向を抑えるのに絶大な効果を発揮することがある。サミュエル・ジョンソンの言葉を借りれば、「絞首刑が目前に迫っていると、驚くほど意識を集中できるものだ」。

まず、五年後に何が真実となっているか、考えるところから始めよう。ラリー・ペイジはよく、CEOの仕事はコアビジネスについて考えることだけでなく、未来について考えることだ、と口にする。企業が潰れるのは、たいてい自分たちがやってきたことにあぐらをかき、漸進的変化しか生み出さないためだ。それはテクノロジー主導で猛烈な変化が起きている今日、これまで以上に命とりになる。だから「何が起きるか」ではなく、「何が起こり得るか」と自問しなければならない。「何が起きるか」を考えるのは予測であり、こんにちのような急速に変化する世界では意味がない。「何が起こり得るか」という問いは、想像力をかきたてる。常識の枠内では想像もできなくても、想像しようと思えば本当はできることは何か?

ビノッド・コースラは、1980年にはマイクロプロセッサがコンピュータだけでなく、自動車が電動歯ブラシなど、ありとあらゆるモノに使われるようになることなど想像もできなかった、と指摘する。

(中略)

だから常識を捨て、想像力をたくましくし、これからの五年であなたの業界で「起こり得ること」は何かと自問してみよう。一番速く変わるものは何か、まったく変わらないものは何か。未来がどうなりそうか考えがまとまったら、次に挙げるさらに難しい質問を考えてみよう。

とびきり優秀で資金力も豊富なライバルは、あなたの会社のコアビジネスをどう攻撃してくるだろうか。デジタル・プラットフォームを使って、どんなふうにあなたの弱点を突き、最も利益率の高い顧客層を奪ってくるだろう。あなたの会社は自らの事業を破壊するために、何をしているだろうか。カニバリゼーションや売上減少を理由に、イノベーションの芽を摘んでいないか。利用が拡大するにともない、リターンや価値が高まるようなプラットフォームを構築するチャンスはないか。

会社の経営陣は日頃から自社プロダクトを使っているだろうか。それに夢中だろうか。妻や夫への贈り物にするだろうか。顧客はあなたのプロダクトに夢中だろうか。それとも何らかの原因でしかたなく使っており、将来はその要因がなくなることはないか。他に選択肢があったら、顧客はどうするだろう。

今後発売する予定の主要プロダクト・サービスをざっと眺めたら、そのうちの何割がユニークな技術的アイデアにもとづいているだろう。経営の上層部にプロダクト部門の人材はどれだけいるだろう。会社は最高のプロダクトを生み出すうえで最も影響力の大きい社員に対し、報酬面、昇進面で存分に報いているだろうか。

経営陣は採用を経営の最優先課題にしているだろうか。幹部は実際に採用活動に時間を割いているだろうか。優秀な社員のうち、三年後も会社に残っていそうなのはどれくらいか。ライバル会社から10%の昇給を提示されただけで、会社を去りそうな人材はどれくらいいるのか。

会社の意思決定プロセスは最高の判断を生み出しているだろうか。それとも最も受け入れやすい判断だろうか。

従業員はどれだけの自由を手にしているだろうか。本当にイノベーティブな人材は、職位の高さに限らず、自分のアイデアを追求する自由を与えられるだろうか。新プロダクトに関する決定は、利益ではなく、プロダクトの優位性にもとづいて行われているだろうか。

情報を囲い込もうとする人と、ルータのような働きをする人では、社内ではどちらが成功しているだろうか。縦割り主義によって情報や人の交流が妨げられていないか。

いずれも厳しい質問で、それによって問題が浮き彫りになったとしても簡単な答えは見つからないだろう。だが初めから質問をしなければ、解決策が見つかる可能性もゼロだ。従来型企業は、自分たちがどれほどのスピードで破壊されるか、気づかないことが多い。だが自らにこうした質問を投げかければ、現実に向き合うのに役立つ。また、これはとびきり優秀なスマート・クリエイティブを惹きつけ、奮い立たせるのにも効果的だ。こうした人々は挑戦を好むだけでなく、挑戦しなければならない事実を素直に認める姿勢に魅力を感じるからだ。「やれやれ、ようやくこの会社にも難しい質問に向き合う覚悟が出てきたな。それならオレたちが答えを見つけてやろうじゃないか!」

だが、ここでもう一つ厄介な疑問が持ち上がる。あなたの会社は、とびきり優秀なスマート・クリエイティブを集めるのに適した場所にあるだろうか。インターネット、モバイル、クラウド技術の興味深い影響の一つは、産業活動のハブがこれまで以上に強力になり、影響力を増していることだ。インターネットをはじめとするコミュニケーション技術の進歩によって、世界のあちこちにハブが誕生し、既存のハブの重要性が薄れるかと思われたが、実際にはその逆が起きている。さまざまな産業で、新しい小さなハブが生まれているかもしれないが、すでに存在していたハブの重要性は低下するどころか高まる一方だ。ことスマート・クリエイティブに限って言えば、物理的なロケーションの重要性はかつてないほど高まっている。

世界中の国々が技術的ハブとしてのシリコンバレーの奇跡を再現しようと努力しているにもかかわらず、そうした国々で生まれたスマート・クリエイティブがテクノロジー業界でのキャリアを築くためシリコンバレーにやってくるのはこのためだ。

(以下省略)

聞かれて嫌な質問」は「耳が痛い話」と同義だろう。
「その」質問が嫌に感じるのは、的を射ていて、耳が痛いからだ。
人は、異性の求愛の真贋を瞬間見抜けるように(笑)、他者の指摘の真否を瞬間判断でき、かつ、真のそれを痛く感じる。

しかし、異性の真の求愛は心地良く感じるのに、他者の真の指摘は痛く、不快に感じるのはなぜなのだろう。
なぜ、いずれも真実なのに、凡そ私たちは前者には肯定的で、後者には否定的なのだろう。

理由の一つは、前者が自己肯定的、自己支持的である一方、後者は自己否定的、自己攻撃的だからだろう。
現代人が生の維持を断念し、自殺するのは、物質的に食えなくなる場合より、希望、生き甲斐(存在意義)、自信を喪失する場合、つまり、自己肯定が困難になる場合の方が多いが、自殺しないまでも、他者の指摘は、生の条件である自己肯定を脅かす。

経営者が「嫌な質問」を自問するのが不得手、不快なのも、本質的には同じ理由だろう。
たとえば、私は生業の経営コンサルティングで、支援企業の経営者からこう言われたことがある。
「(店長)会議に(堀に)参加されるのは、自分の尻の穴を見られているようで、(経営者としての)自分の不出来さを見抜かれているようで、堪らなく恥ずかしい」。
日本の経営者の多くが経営コンサルタントという「コーチ」を毛嫌いし、指摘を遠ざけるのは、凡そ「企業利益の最大化」という使命を忘れ、「自己肯定の最大化」という我欲を選好する(ことが制度かつ文化的に許容されている)からだろう。
楽観に足る望ましい未来が、積極的な悲観とその対処に依存することを、とりわけ経営者は忘れてはいけない。



How Google Works(ハウ・グーグル・ワークス) 私たちの働き方とマネジメント (日経ビジネス人文庫)
著者:エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ
翻訳:土方奈美 
日本経済新聞出版
2017-09-02




kimio_memo at 08:39│Comments(0) 書籍 

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