2013年08月30日
【経営】「不格好経営」南場智子さん
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私が何に苦労したか。まず、物事を提案する立場から決める立場への転換に苦労した。面食らうほどの大きなジャンプだったのだ。
コンサルタントとして、A案にするべきです、と言うのは慣れているのに、Aにします、となると突然とんでもない勇気が必要になる。コンサルタントの「するべき」も判断だ。しかし、プレッシャーのなかでの経営者の意思決定は別次元だった。「するべきです」と「します」がこんなに違うとは。
実際に事業をやる立場と同じ気持ちで提案しています、と言うコンサルタントがいたら、それは無知であり、おごりだ。優秀なコンサルタントは、間違った提案をしても死なない立場にいるからこそ価値のあるアドバイスができることを認識している。
南場智子さんのお考えは、詰まる所、「最善解とその実行は、他人事でしかあり得ない」ということだろう。
たしかに、日産自動車のリバイバルプランが、ルノーのカルロス・ゴーンさんが起案と実行の責任者を務めたからこそ成功したように、南場さんのこのお考えは一理ある。
ただ、南場さんがこのお考えを持つに至ったのは、DeNAを起業するまでコンサルティング会社でしか勤務した経験が無く(→一般事業会社で勤務した経験が無く)、本来価値(商品)としてしか「コンサルティング」、「アドバイス」、「提案」を、ひいては、「最善解」を顧客に販売したことがないことが大きい様に思えてならない。
もし、南場さんが、自動車の販売や住宅の建築といった人生の一大事事で、それらを付加価値(商品)として顧客に販売したことがあれば、かくも断言できなかったのではないか。
「もし、自分があなたさま(=顧客)なら、これを最善解として選択、実行(フル活用)します」。
私は、いかに無知でおごりと言われようと、こうした顧客同一化目線での「コンサルティング」、「アドバイス」、「提案」の存在とビジネス価値を信じたい。