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2012年10月30日

【将棋】「先ちゃんの浮いたり沈んだり/芸の極み、引退棋士の指し回しと勝たねばならない現役棋士の激闘」先崎学さん

P89
将棋連盟では、月に数回、男性棋士と女流棋士によるぶつかり稽古のような研究会を行なっている。
男の棋士は若手からベテランまで多くが参加して、なかなかに楽しい会である。
存外男女で指すことはすくない世界なので、女流棋士はもちろん、男性棋士にとっても貴重な場である。

(中略)

私の隣で指していたのは引退されて久しい桜井昇八段。
この日は先ごろ引退された石田和雄九段もいて賑やかであった。

さて、桜井八段、平手の将棋を指すのは何年ぶりかなあなどとボヤキながら若手の女の子を相手に指しているのだが、これが見ていて惚れ惚れするくらい急所に手が行くのである。
腕に年は取らせないというか、若手には悪いが芸が違うという感じなのだ。
しかし、問題は終盤である。
若手は当然ながら粘りまくるわけで、手を焼いているうちに桜井さん投了。
「いやあ、驚いた。アンタ、強い!」

私は「先生こそ強いでしょ、天才ですね」とおだてた。
「はっはっは、なかなかやるだろう。でも粘られて駄目だね。まいった」。
先輩の明るく元気な姿を見るのは嬉しいことである。

石田九段も次から次へと吹っとばしていた。
トップを張った棋士の指は常によいところに伸びるのだ。
要は根気がなくなって勝てなくなり引退しただけなのである
勝っても負けてもいい将棋を指すのと、勝たなければいけない将棋を指すのでは当り前だがまったく心持が違う。
左様、勝負はプレッシャーとの闘いである。

さて、ここからはその、プレッシャーと闘う現役のはなし。
女流王将戦で里美香奈女流王将に中村真梨花女流二段が挑戦し、三番勝負が行なわれた。
一局目は中村さんが勝ち、王手をかけた。
中村さんは攻めが非常に強い将棋で、研究熱心なことでは女流でも一、二を争う。
控室の常連でもある。

実力はあれど、今までタイトルを奪ったことがなく、ここはビッグ・チャンスなのだ。

(中略)

二局目、聞き手の甲斐智恵美さんが「真梨花ちゃん、相当プレッシャーがかかっているみたい」という。
中村さんは惜しい将棋を負け、続いて行なわれた三局目も完敗し、逆転でシリーズを落とした。

終局後、「失礼します」と足早に消える中村さんにかけることばもでない。
日ごろは可愛らしい里美さんがこの時だけは憎らしく見えた
現役である以上、憎らしいほどにならなければいけないというのは真理である。

たしかに、将棋に限らず、人は、年を取ると、勝負事、競争事に淡白になる嫌いがある。
そして、その元凶は、先崎学八段のお説の通り、最終局面まで根気が持たないことにある
では、なぜ、人は、年を取ると、勝負事、競争事の最終局面まで根気が持たないのか。

主因はやはり「体力の減退」だろう。
根気の原点能力である集中力は体力そのものでもあり、その減退は集中力を、ひいては、根気を、大きく滅ぼすに違いない。
しかし、真因は、先崎八段がこの度女流王将位を逆転防衛した、格下(失礼)かつ対戦確率の低い里美香奈女流棋士にさえ憎らしさを自覚なさった挿話から考察するに、「憎悪力の減退」ではないか。

勝負事、競争事の本質は「やるか、やられるか」であり、勝利するには、自分以外の相手を敵として敬愛する一方、敵として憎悪する必要がある。
ただ、憎悪力も年を取ると減退する嫌いがあり、然るに、熟年者は凡そ若者とは違って非攻撃的で、キレイゴトを選好する。

憎悪力は根気の要素能力であり、その減退は、体力の減退と同様、根気を大きく滅ぼすのではないか。
この考察が相応に正しければ、人は、キレイゴトばかり言い始めたら、勝負師、競争人として終わりに違いない。



週刊文春 2012年11月1日号
著者:文藝春秋
販売元:文藝春秋
(2012)




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